本格金継ぎと簡易金継ぎ、どちらを選ぶ?
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金継ぎを始めようとすると、必ず最初にぶつかる分かれ道があります。本格金継ぎ(本漆金継ぎ)と簡易金継ぎのどちらを選ぶか、です。ここを取り違えると、完成までの日数も、仕上がりも、直した器の使い方も、まるで変わってきます。
一覧で見る違い
| 本格金継ぎ | 簡易金継ぎ | |
|---|---|---|
| こんな方に | 伝統素材で本格金継ぎを体験したい | お手軽・簡単に金継ぎを楽しみたい |
| 接着・パテ | 天然の漆(麦漆・錆漆・刻苧漆) | 陶器用の合成樹脂 |
| 仕上げの粉 | 純金・純銀 | 真鍮粉(金の代替粉) |
| 食器としての使用 | ○ 天然素材で食器にご利用いただけます | △ 合成樹脂のため熱いものには適しません |
| 仕上がり | ○ 綺麗に仕上がる | △ 代替粉の仕上がり |
| 完成までの目安 | △ 約1か月 | ○ 1日~数日 |
| かぶれ | △ 可能性あり | ○ ほとんどなし |
本格金継ぎ ― 伝統的な手法をそのまま
接着からパテ、金を蒔く下地まで、すべてを天然の漆と自然素材で行う方法です。合成樹脂は一切使いません。室町時代から続く手順を、そのまま自宅で再現することになります。
純金・純銀による仕上がり
仕上げに使うのは、代替品ではなく純金と純銀です。真鍮粉との違いは、実物を並べると一目で分かります。金の粉が漆の上で光を受けたときの深み、そして時間が経っても色が変わりにくいこと。この差が、直した器を長く使い続けたときに効いてきます。
完成まで約1か月 ― ただし作業日は9日程度
誤解しないでいただきたいのは、1か月ずっと作業しているわけではないという点です。手を動かす日は9日程度で、1日あたりの作業時間もそれほど長くありません。残りはすべて漆が固まるのを待つ時間です。
- 破片の接着後 … 2~3週間ほど寝かせる
- 欠け埋めの後 … 数日~1週間ほど(欠けの厚みによる)
- 中塗り各回の後 … 1日ずつ
- 金粉を蒔いた後・粉固めの後 … 3日ずつ
漆は空気中の水分と反応して硬化するため、この待ち時間は短縮できません。急ぐと必ず仕上がりに出ます。
こんな方に向いています
- 伝統的な手法そのものを体験したい
- 直した器を、日常の食器として長く使いたい
- 仕上がりの美しさにこだわりたい
- 待つ時間も含めて楽しめる
簡易金継ぎ ― 現代的にアレンジされた手法
天然の漆の代わりに、陶器用の合成樹脂を使う方法です。当社のキットでは食品衛生法に適合した日本製のエポキシ樹脂を採用しています。A液・B液の2液を混ぜ合わせて使う方式で、約30分で硬化します。仕上げの金色は、真鍮粉(金沢・今井金箔製)を用います。
樹脂は湿度を必要とせず短時間で硬化するため、全体で1日から数日あれば完成します。天然の漆を使わないので、かぶれの心配もほとんどありません。
使用上の注意
- 熱いものには適しません。電子レンジ・オーブンには使用できません
- 真鍮粉は銅と亜鉛の合金です。金属アレルギーのある方はご注意ください
- アレルギー体質・特異体質の方は使用をお控えください
こんな方に向いています
- まず金継ぎがどんなものか試してみたい
- 1か月も待てない、早く器を使いたい
- 肌が弱く、漆かぶれが心配
- 飾り皿や小物など、熱いものを入れない器を直したい
「新うるし」との違いにご注意ください
市販の簡易金継ぎ材料には、「新うるし」「合成漆」「人工漆」などと呼ばれるものがあります。かぶれない利点がある一方で、メーカーによっては「食器など口に含む恐れのあるものには塗装しない」ことを推奨している製品もあります。
簡易金継ぎを選ぶ際は、価格や手軽さだけでなく、使われている樹脂が何であり、食器に使えるのかどうかを必ず確認してください。当社の簡易金継ぎセットが食品衛生法適合の樹脂を採用しているのは、この点を重視しているためです。
迷ったときの考え方
判断の軸は「どちらが優れているか」ではありません。その器をどう使いたいかです。
毎日の食卓で使い続けたい器、熱い汁物を注ぐ器、思い入れの深い器であれば、時間はかかっても本格金継ぎが向いています。一方、まず一度やってみたい、飾り皿や小物を直したいということであれば、簡易金継ぎから始めるのが現実的です。
簡易金継ぎで手順の全体像をつかんでから本格金継ぎに進む、という順番も理にかなっています。工程の考え方そのものは、どちらもよく似ているからです。