金継ぎを始める前の4つの不安にお答えします

金継ぎに興味はあるけれど、なかなか手が出せない。その理由の多くは、実際にやってみれば解消するものです。ここでは、はじめての方から寄せられることの多い4つの不安について、順にお答えします。

不安1:時間がかかるのではないか

かかります。ただし、拘束される時間は長くありません。

本漆金継ぎは完成までおよそ1か月。この数字だけを見ると、途方もない作業に思えるかもしれません。しかし内訳を見ると印象が変わります。

実際に手を動かす作業日は9日程度で、1日あたりの作業時間もそれほど長くはありません。1か月のうち大半は、漆が固まるのを待っている時間です。器を漆風呂に入れて蓋を閉めたら、あとは日常に戻るだけです。

金継ぎは「1か月休みなく取り組む趣味」ではなく、「1か月かけて、思い出したときに少しずつ進める趣味」だと考えてください。

どうしても早く仕上げたい場合は、簡易金継ぎという選択肢があります。樹脂を使うため湿度による硬化を待つ必要がなく、1日から数日で完成します。

不安2:直した器は、食器として使って大丈夫なのか

最も慎重にお伝えすべき点です。選ぶ手法によって答えが変わります。

本漆金継ぎの場合

接着からパテ、金の下地まで、すべて漆と自然素材で構成されます。合成樹脂は使用しません。仕上げに使うのも代替品ではなく純金・純銀です。漆はもともと食器の塗装に使われてきた素材であり、完全に硬化した漆は安定しています。日常の食器としてお使いいただけます。

簡易金継ぎの場合

当社のキットでは食品衛生法に適合した日本製の陶器用エポキシ樹脂を使用しています。ただし、以下の点にご注意ください。

  • 熱いものには適しません。電子レンジ・オーブンにも使用できません
  • 仕上げの真鍮粉は銅と亜鉛の合金です。金属アレルギーのある方はご注意ください

市販品を選ぶときの注意

簡易金継ぎ用として売られている「新うるし」「合成漆」の中には、メーカー自身が「食器など口に含む恐れのあるものには塗装しない」ことを推奨している製品があります。かぶれないことと、食器に使えることは別の話です。材料を単品で買い集める場合は、必ず個別に確認してください。

共通のお手入れ

金継ぎした器は、漆器と同じ扱いが基本です。柔らかいスポンジで優しく洗い、電子レンジ・オーブン・食洗機は避けてください。金の線を強くこすると、せっかくの仕上げが傷みます。

不安3:失敗したらどうしよう

金継ぎの工程の多くは、やり直しがききます。

接着後にはみ出した漆や樹脂は、硬化後に削り落とす工程がもともと手順に組み込まれています。「はみ出したら失敗」ではなく、はみ出す前提で、後から削って整えるのが金継ぎのやり方です。

欠け埋めのパテも同様で、盛って、硬化させて、削る。厚みが足りなければ、もう一度盛れば済みます。深い欠けは、あえて2回に分けて埋めます。

金粉を蒔く工程で下地の乾き具合を逃してしまった場合も、下地を塗り直すところからやり直せます。

失敗として本当に避けたいのは、次の2点です。

  • 一気に削ろうとすること ― 刃が引っかかり、器を傷つけます。カンナ掛けのように薄く少しずつ
  • 油分をつけること ― 漆は油と相性が悪く、油分が付いた面では固まりません

これさえ守れば、多少ゆがんでも、削って直せます。そもそも金継ぎは、完璧な直線を目指す技術ではありません。手仕事の揺らぎは、そのまま景色になります。

不安4:技術が難しそう

確かに金継ぎは職人の技術です。ただし、工程を一つずつ分解すると、それぞれは特別な器用さを必要としない単純な作業の積み重ねです。

  • 断面の角を、ヤスリで削る
  • 粉と液を、決められた比率で混ぜる
  • 混ぜたものを、割れ目に塗る
  • はみ出した分を、削る
  • 粉を、筆で蒔く

難しさがあるとすれば、技術そのものより「なぜこの作業をするのか」が分からないまま進めてしまうことです。理由が分かっていれば、多少手順が前後しても対処できます。逆に、意味を知らずに手を動かすと、少し状況が変わっただけで判断できなくなります。

当社のセットに同梱している手順書は、この点を重視して作っています。オールカラーで手順を追えるようにしたうえで、コツと「なぜこの作業が必要なのか」の解説を随所に入れました。ひび(割れていない状態)の修復手順も収録しています。

道具の面でも、必要なものは一式そろえてあります。何をどこで買えばよいか調べるところから始める必要はありません。


不安の多くは、情報が足りないことから生まれます。逆に言えば、事前に知っておくだけで、そのほとんどは不安ではなくなります。金継ぎは、失敗しても削って直せる、懐の深い技術です。

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